行動動機は案外、意外
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


       




三人に前世の記憶が戻ったのは、
一年前後の誤差もあったが、それでも高校生になってから。
互いの出会いも刺激になったのだろと言われており、
そんな仲良したちは、いつだって着かず離れつ いつも一緒で。
気の合う同士で 去年から揃って手をつけ始めたものにも色々あるが、
その最たるものといや、やはりやはり“ケーキ作り”じゃなかろうか。
保護者の皆様も、
これに構けている分には お顔も尖らず苦笑もなさらずと、
平和の象徴のように思っておいでで。

 「意外だったのがシチさんが未経験だったって事でしたが。」
 「え〜? アタシとしては、
  久蔵殿がこんなにもお上手だったのが意外でしたよう。」

  幼稚舎からっていう生え抜きの女学園育ち、
  生粋のお嬢様だったから、
  てっきり ちょっとはお姉さんぶれるかと思ってたのに。

  そうそう、玄人はだしですものね。
  メレンゲが細かくてスポンジはふわふわで、
  生クリームへの甘さの具合も絶妙で美味しいし、と。

七郎次と平八と、二人掛かりで持ち上げられて、

 「〜〜〜〜〜。///////」

大きなボウルを懐ろに抱え、メレンゲを泡立てていた紅ばらさんが、
思わぬ賛辞に真っ赤になってる此処は、
ひなげしさんの下宿先、八百萬屋の厨房だったりし。
平八は五郎兵衛殿の手際を見ていたし、時々はお手伝いもして来た身なので、
やはり手慣れておいでと来ての、あとの二人の先生役になり。
マドレーヌにロールケーキ、マカロンにモンブランと、
結構な上達ぶりにて、可愛らしいケーキやスィーツを作って来たお嬢様たち。

 ……で、今日は何を作りましょうか?
 お酒の場への差し入れだし、ビターなチョコケーキとか?
 いやいや、あくまでもお子様扱いしないでという意向を込めるのだから、
 反語的にイチゴのショートケーキでもいいかも…なんて、

ちょっぴり企みを抱えてというお顔をわざとらしくも披露しつつの、
でもでも、すぐにも肩先でつつき合い、
クスクスと微笑い合いつつの下準備中。

 「いっそのこと、劇甘いジャム入りのカップケーキとか?」
 「………。」
 「何ですか、久蔵殿…って、ショートケーキへ塩辛入れるって?」
 「ええ〜〜?」

それは食べ物として成立してないから罰が当たりますってばと。
冷蔵庫にあった小瓶を取り出した紅色の眸をしたお嬢さんへ、
いくら何でも罰ゲームじゃないんだしと制止にかかった二人だったが、

 「…?」

かこんと堅いめの蓋を開けた久蔵殿はと言えば、
傍にあったスティックタイプのクッキーの先を浸すと、
たっぷり掬ってパクリと食べる。

 「……う。」
 「結構悪食なんだね、久蔵殿。」

 え? 辛いものも甘いのと合体させれば食べられる?
 そういう無理をして食べなくてもいいんですったら。
 え? これに限っては無理じゃない?

  「う〜〜〜ん。」 ×2
(笑)

ともあれ、彼女にしてみれば罰ゲームネタではなかったらしく。

 「きっとあれだよ、兵庫さんが中途半端に言ったの鵜呑みにしたんだ。」
 「かも知れないね。」

  健気だなぁ〜、久蔵殿vv

  〜〜〜〜。////////

  ああこれこれ、
  照れるのはいいとして、メレンゲに塩辛はストップですってば。

何やらおかしな方向へよれかかったので、
平八が棚からケーキのレシピブックを引っ張り出して来て、

 「そうそう。モンブランといや、
  栗やカボチャ以外にもいろいろあるんですよね。」

淡いパステルピンクのイチゴのや、
クリーム色だが、桃のスライスが乗っているのや。
いろいろなクリームを使ったモンブランの写真が、
数頁にわたって それは愛らしく居並んでおいで。

 「桃やマンゴーはクリームにするのが難しくないですかね。」
 「分離。」

そうですよね、柑橘類もですが、
夏場の果物ってタンパク質を分解しちゃうものが多いですものねと、
久蔵の指摘へ肩をすくめた平八であり。

 「えっとぉ、
  ちなみに在庫にあるのは
  早出の栗とイチジクと、あ、梨もありますよ?」

何だったら、ゴロさんに出先で買って来てもらってもいいんですし。
あ、そかそか、今 例の公民館なのねと。
不在のオーナーの話へ移ったはいいが、

 「……遅い。」
 「え?」

ぽつりと呟いた久蔵だったのへ、
七郎次が小首を傾げつつお友達のお顔を覗き込めば。
クッキング用にとTシャツにジャージという恰好になっていながらも、
細っそりしなやかな首条を、心持ち項垂れているように傾けている姿は、
どこか繊細で麗しく、バレエのお話の悲恋の姫を思わせて。

 「久蔵殿?」
 「〜〜〜〜〜〜。////////」

  あ。もしかして、
  ゴロさんが兵庫殿からの言伝てを預かってないかなって?
  それを持って早く帰って来いって待ってるのかな?

  〜〜〜〜〜〜〜。///////////

図星だったらしい三木さんチのお嬢様が、
ますます真っ赤になったところで、
最近 木刀の振りが断然鋭くなりつつある、
可憐な(?)お嬢様をからかうのはその辺にして。

 「ああ、そうだ。ヘイさんテレビ観てもいいかな?」

怒るな怒るなとふわふかな金の綿毛を撫でてやりつつ、
そうと聞いたのが白百合さんこと、草野さんチのお嬢様。
通ってた中学の斉唱部がね、
コンクールの全国大会に進出したの。
その中継があるってメールもらったんでと、
中学時代の後輩さんからも、慕われておいでの白百合さん。

 「いいですよ。えっと、リモコンは、と。」

厨房にも、小さめの液晶テレビがおいてあり。
普段はレシピのデータが入っている
SDカードを差し込んで観ているそれなので、
民放ですか?NHKかな?と、
地上波チャンネルのどこかも判らぬまま、
どこだどこだとザッピングを始めた彼女らだったのだが……。


  「…………………はい?」 × 3




      ◇◇



恐らくは“陽動”だろうと思うと、
推定のための材料はほとんど無いにもかかわらず、
相手の目的をそのように見極めていた勘兵衛であり。

 『あまりに不慣れなメンツでの実行なので、
  此処は主舞台ではないのは見え見えだったからな。』

籠城に選んだ場所も不適切なら、
主犯はともかく他の顔触れの手際もいいとは言えず、
しかも態度が不安定すぎる。
営業マンの若いのに睨まれただけで肩を震わす者までおり、
拳銃の扱い方も、
単なる携帯電話みたいに手に持っているだけという気配がありありしたので、
ライフル以外はモデルガンに違いない。
そこへは五郎兵衛や兵庫も察知していたようで、

 『銃口を自分の胸元へ抱え込んでどうするね。』

なのでの余裕の“会話”でもあった訳だが。
それでも、いきり立たれて他の人質さんが殴られでもしたらいかんと、
一応は慎重に構えていたものの、
監視カメラを見上げた犯人だったのへ、
勘兵衛がふと…今になって気づいたというか想起してしまったのが、

  ―― しまった、こんな騒動を訊いてあの3人が動かぬとは思えない。

   さあ、皆様もご一緒に   
そこかいっ!


  ……という鉄板の冗談はともかく。

 《 此処に我らが来合わせているというのは、あれらも知っておるはずだ。》
 《 ああ。私も久蔵に話したしな。》

しかも、昼間のワイドショーの時間帯だ、
ニュース速報だけで収まらず、
ご丁寧に中継するようなテレビ局もあるやもしれぬ。

   ……とあって、

実は 所轄の奮闘に任せようという構えでいたものが、
(おいおい)
そんな悠長を言ってられなくなった壮年三人様。
あ、榊せんせえは まだぎりぎり30代だったかな?
(こらこら)
自主的に動いて、何としても解決を早めねばと、
方針の変更を余儀なくされたのは言うまでもなくて。
大急ぎで事態の解析をもちっと深く浚ってござる。

 《 陽動というと?》
 《 例えば、近隣のどこかでもっと大きく深刻な犯罪を予定しているとか。》
 《 それこそ強盗とかいうレベルの話だの。》

ああ。
異臭騒ぎや自分の身を盾にしての籠城というのでは、
騒ぎが小さすぎて陽動にはならぬ。
そうかと言ってコンビニ強盗ほどともなりゃあ、
自主的な投降というのを繰り出すのは難しくなる。

 《 自主的な投降?》
 《 ああ。
   陽動だからな、メインの犯行の方が成功したなら、すぐにも撤退。
   適当な理由をつけて 早まったんだと自首すれば、
   実刑なしの甘い罪状になるとか踏んでいるのだろうさ。》

そんなこんなで、敢えて適当な騒ぎにしたんだろう。
そうやって警察の手勢をこっちへ裂いておれば
真の目的にあたる犯行への初動が遅れる。
通報へ対応する人員も限られるし、
何より指揮や連絡の系統を整備する必要もあるから、
そんな混乱の間に肝心な事件のほうの実行犯を捕り逃しもするだろう。

 《 銀行を襲うほど大きいものでなくとも…。》

別口の仕様も幾つか思いついておいでの警部補殿らしく。
とはいえ、今はそれはさておいてのとりあえずと、
手短に二人へ 二、三の手際を告げてから、

 「何をごそごそしてやがる。」

気配を消しての身を縮めていたので、
そちらも出入りの会社員と業者、
それから、どこかの部屋で文化教室でも開いている、
お習字のせんせえくらいに思われていた三人ほどが。
何を思ったものか急に気配を立ち上げた“主張”に、
犯人側でもようよう気づいたのだろう。
大人しくしてりゃあ何もしねぇと言っただろうがと、
此処で初めて主犯の男が手を挙げかけたが、

 「  …うっ。」

それこそ威嚇も兼ねてか ずかずかと大股で歩み寄って来たのへと、
すぐ目の前へと迫った間合いで、さっと素早く立ち上がって来たのが、
実は体格がよかったらしい書道のせんせえ(仮)。
思わぬ大きな存在がいきなり目の前へ現れたようなもので、
それでも、彼のために弁解して差し上げるなら、
咄嗟に怯んだのは、
臆したというよりも反射が働いてのことだったのだけれども。
こちらの彼らにはそんな一瞬の隙で十分だったようで、

 「なに、ちょっと急ぐ必要が出来たのでなっ!」

語尾が弾んだのは、それも威嚇かライフルの銃口が降ろされたのを、
こちらさんは臆しもせぬまま、
通りすがりの木立ちから伸びていた若い枝でも立ち塞がったの、
無造作に払いのけるかのような気軽さで。
前へと出した腕の背中で、
おっかない得物の銃身、軽々真上へ弾き飛ばしておいで。
勿論のこと、不意を突かれりゃ暴発の恐れもあったこと、
それは幸いまぬがれたけれど、

 「何しやがるっ!」

思わぬ抵抗を、しかも余裕の堂々と示されたことで、
生意気なという憤慨が加速度的に膨らんだらしく。
振り上げられた銃を戻しつつ、
今度は間違いなくの相手の胸倉へ向けんと仕掛けたものの。
その足元までは注意が向かなかったのは、
やはり…そのくらいで集中力が散ってしまうよな小者だったからということか。
というのが、
銃を戻しかかったサングラスの男、
手元にばかり気が向いていたところへ、文字通りの足元を掬われた。

 「うわっ?!」

目の前で判りやすく動いた長髪の男ばかりを意識していたせいで、
その隣にいた痩躯の男性には注意が向かず。
そちらさんは座っていたままだったのも油断を誘った原因だったが、
だがだが、こちらさんとて元は相当に手練れだった実戦派もののふの転生人。
ジャケットの懐ろから取り出したアンテナペンを、
それがナイフなら所謂“逆手”、小指の側から出るようにと握り、
そのまま素早く突き出して、
出っ張り側を引っかけたのが、サングラスの男の膝の裏。
遠慮なぞ要るものかと、
容赦なくの思い切り引いたものだから、
唐突な“膝かっくん”を仕掛けられたようなもので。
ぐらりとバランスを崩しての、あっと言う間に仰向いて倒れてしまう。
そんな揺さぶりに遭い、今度こそは暴発していたかも知れぬ銃だったが、

 「ほいっとな。」

どうっと倒れた若造へ、
その動線を追うようにと最初の壮年殿が、
空いていた空隙、ほんの数歩分を一歩で歩み寄ると、
相手の手元を手際よく蹴っての薙ぎ払えば、

 「あっ!」

一番の脅威だった得物、ライフル銃がただの棒切れと化して、
床をぐるぐると回りながら端まですべっての遠のいてゆき、

 「なっ!」
 「てめぇっ!」

残りの顔触れが銃を手に手に構えた動作へは、
他の人質の皆さんが、それぞれひゃあっと身を縮めたものの。

 「勿体ないが仕方がない。」

あとお一人の壮年殿が、
立ち上がりざま、すぐ間際のソファーの陰へと突っ込んでおいた岡持ち、
箱の縁を爪先で軽く蹴り。
ソファーの脚のどこかへ当ててこっちへと返って来させて引き出すと、
次には同じ縁を真上から踏みつけて、
平たい箱の部分が斜めになるよに一気に弾き上げさせる。
中に入っていたのは、
まだ青いままな栗のイガを象った、
ところどこが紫がかった茶の混じる緑の練りきりと、
四角い金つばに 丸い三笠だったようだが。
その練りきりを幾つか、手元までへと弾き上げると、
大きな両手へ持ったまま、
二人同時という荒業で、
向かって来た相手の口元へと一気に押し付けたから…たまらない。

  人間というものは、
  はっきり苦手と判っているものよりも、
  得体の知れないものの方が何倍もおっかないのだそうで。

 「ひゃあぁあっ!」
 「な…っ!」

口と鼻とを突然ふさがれたことも衝撃だったろうし、
それがまた、はっきりと痛いものじゃあなし。
だがだが 薄味だったので甘いものだと判るまでにも間が要って。
何だこれ何だこれという、
不気味な“理解不能”が襲い掛かった二人は、あっさりと恐慌状態に陥った。
別な手合いがこの野郎と殴り掛かって来たのへは、

 「先達への礼儀がなっとらんっ!」

突き出した拳、五郎兵衛へ届かせるためとはいえ、
手前にいらしたご婦人を押しのけるとは何事かと。
横合いから割り込んだ格好、
男の進路上へ飛び出した兵庫が繰り出していた鋭い蹴りが、
若造一人をあっさりと撃沈しており。
スーツの裾をひるがえしての返す蹴りにてもう一人、
こちらは踵で金的を一閃。

 “やるやる♪”

人質はどんなに大人しく見えても縛っておかなきゃ危ないよと、
妙な教訓を残しつつ。
いきなり暴れだした人質、たった3人、しかも丸腰に、
あっさり伸された犯人一味という顛末で。
ガラス張りのロビーだったので、
角度を考えれば、外からもこの次第はようよう見えたのだろうけれど。
だとすればそこは計算ミスか、
ソファーの陰になっての七転八倒は、
だがだが、すぐには外へ伝わらなかった模様。
というのも、

 「……さてと。」

ライフルを蹴り飛ばした後、
腹をどんっと…多少は加減もしてやって、
踏みつけてやっての人事不正に落とした相手の懐ろから、
始終何をか、見るか聞くか、していたらしい、
主犯の男の携帯電話を取り上げた勘兵衛。

 「…………………成程。」

液晶画面をしばし眺めてから、
深色の双眸を不敵に細く絞り込み。
取り上げられていた携帯を皆さんへ戻していた兵庫殿の傍らへ寄ると、
自分の携帯を手にしかかっていた、営業マンの先輩格の方の手を掴む。

 「な…。」
 「失敬。だが、作戦が破綻したと伝えられては困るのでな。」

そんな一言を口にしたところ、
後輩らしかった若いのが“えっ”と目を見張り、
だがだが、指摘をされた側は苦々しげに顔を歪める。

 『万が一、人質が一人も取れなんだらどうしたね。』

自分の身を盾にする籠城というのも聞かなくはないが、
例にも挙げたようにそれだと規模が小さすぎ、
周辺への交通規制は、さして厳しく構えられないかも知れぬ。
そこでの保証のようなもの、仲間を仕込んでいたらしく。

 『人質を拘束する準備がないのはやはり不自然だし、
  ましてや あのように、抵抗されたら手ごわい年頃の男性を、
  そのまま放置というのはやはり解せなんだのでな。』

ご当人の首元から引き抜いたネクタイで、
やはり後ろ手に縛っても、何の反駁もなかったあたり、
警部補殿の差した目串は間違いなかったらしく。
監視は後の二人へ任せ、だがだが、無事だった方々へも、
口の前へと指を立てる仕草見せ、ちょっとお待ちをと制止をかける。

 「………征樹か? 今どこにおる。
  そうか、ならばそこから西へ3つ目の交差点へ向かえ。
  輸送経路を変更させられた、現金輸送車が通るはずだから、
  それへと職務質問する何物かがあれば、即刻 引っ括れ。」

 「おお。」
 「そうか、成程なぁ。」

そういう仕儀を誘導し、尚且つ隠蔽、若しくは発覚を遅らせるための、
こちらは“陽動”のみの騒ぎだったのかと。
まだ意識のある、実行班の残りの4人ほど、
クロークから持って来させたガムテープで後ろ手にくくりつつ、
五郎兵衛殿と兵庫殿が納得に至ったものの、

 「……………?」
 「勘兵衛殿?」

不意に…携帯を頬にあてたまま、棒を飲んだようになって立ち尽くし、
黙りこくってしまった警部補だったのへ。
怪訝に思って声をかければ、

 「間一髪だったようだぞ。」

顔を上げた勘兵衛の声が微妙に堅い。
そして、そんな手短な言いようで、こちらの二人へも事情は通じ。
うっとたじろいでしまう辺りが、見ようによっては面白い。
(こら)

 「???」

メンテナンス会社から派遣されたのらしい、清掃担当のお母様が、
ここまではそりゃあ勇ましくて、胸のすいた活躍を繰り広げた人達なのに、
何でいきなり凍ったんだかと、キョトンとしたほどの豹変で。
そこまでおっかない事実を聞いたらしい皆さんだったが、
一応の確認か、
おずおずと外科医のせんせえが口を開いての訊いたのが。

 「……間一髪とは?」

別のことならいいんだがと、これを専門用語で“悪あがき”という、
そんな想いから聞き直してみたらしい、
黒髪のお医者様へと返されたお言葉はといえば、

 「此処の監視カメラの映像をハッキングしたとかで、
  一見、普段着の下へそれぞれに得物を武装したあやつらが、
  タクシーを駆って此処へ向かいかけておったらしくてな。」

 「う……。」

急な事態へ、そちらさんも周辺の幹線道路の封鎖の手伝いにと
所轄の方々に頼まれての駆り出されてしまってた佐伯刑事が、
たまたまそのタクシーを誘導する羽目と相成り。
向こうさんでもこちらを見分けると、身を乗り出して来ての、

 『佐伯殿っ!』
 『ゴロさんはっ、みんな無事なんですか?』
 『ライフル持ってるなんて、どうしてチェック入ってないのっ!』

紅ばらさん、ひなげしさん、白百合さんの順番で、
矢継ぎ早にそういった“安否”を訊かれたのだとか。

 『ちょ、君らまでどうやって…。』

つか、人質の身元はまだ公表されてはない筈なのにと、
しかも“ライフル”という武装まで飛び出したことへ、佐伯刑事もピンと来て。
どうせ迂回させられて近づけないならと、
降りて来たのを幸い、
もしかしてと思い当たる“経緯”を訊いたところが、

 「大当たりだったらしい。」
 「〜〜〜〜〜。」
 「相変わらず、油断も隙もないお嬢さんたちだの。」









BACK/ NEXT


 *人のことは言えない大暴れをした保護者の皆様。
  どう言い繕う気なんでしょうかね? その続きはしばし待たれい。


戻る